人には自尊感情というものがあります。自分自身を大切に思い、自分自身に価値があることを理解できる感情です。子供の頃から育まれ、醸成される自尊感情。それは日常生活やビジネスの場など、あらゆる場面の行動に影響を及ぼします。自尊感情が高い人と低い人ではどのような違いがあるのでしょうか。自尊感情を高めるべき理由について見ていきましょう。
そもそも自尊感情とは一体どういう意味の言葉なのでしょうか。自尊感情はセルフ・エスティームの訳語で、自分を愛する気持ち、自分を肯定する気持ちなどを表しています。これは決してエゴイスティックな感情ではなく、自分がこれまでどのくらい目標を成し遂げてきたかによって得られるものであると言われています。自分自身にどれだけ価値があり、自分自身を大切にできるかという気持ちなのです。似ている意味の言葉にプライドがありますが、その意味するところは多少異なっています。プライドは誇りと訳されるとおり、自分自身の譲れない部分、これまでに築いてきた自信や自負などを示しています。一方の自尊感情は、自分の誇れる部分はもちろんのこと、自分の短所やダメな部分なども含めて自分を肯定していくことです。良いところも悪いところも全部合わせて自分であると考え、それをかけがえのない存在として愛することのできる感情です。「プライドが高い」というとあまりいい意味で使われない場合が多いですが、「自尊感情が高い」というのは社会生活を送る上で幸福になるために必要な資質といえるでしょう。
自尊感情は仕事や人間関係で重要な役割を果たします。その中で、自尊感情が低い人にはどのような特徴があるのでしょうか。一般的には、自尊感情が低いと物事を早い段階で諦めてしまう傾向にあると言われています。自尊感情が低い人はそれまでになにかを成し遂げてきた経験が少ないので、「どうせ今回もダメだろう」という思考に陥りやすいのです。そのため、チャレンジ精神も少なく、困難に立ち向かうハングリー精神にも欠ける傾向があります。こうなってしまっては仕事もうまくいかないことが多く、これから先も自尊感情が育ちにくいという悪循環になっていってしまいます。なにに対してもネガティブなイメージを抱きやすく、ヤケになったりいじけたりなど、感情が不安定になりやすいのです。
一方で、自尊感情が高い人にはどのような特徴が見られるのでしょうか。自尊感情が高い人は自信に満ちあふれています。これまでの成功体験が多いので、困難な出来事に遭遇しても「自分ならやれる」と考えて簡単には諦めません。問題解決に向けて努力することを惜しまないため、結果的にうまくいくことも多いのです。それはさらなる自信向上につながり、より高い壁を登るためのエネルギーとなっていきます。自尊感情の高さは人間関係にもプラスに働くことも多いものです。他人との付き合いにも自信に裏付けされた余裕があり、さまざまな考え方の人を受け入れられるでしょう。また、これまでの成功体験を元にして他人にアドバイスを送ることもできます。それがさらなる人望を呼び、魅力的な人物像ができあがっていくのです。
高い自尊感情は人生のさまざまな場面で役立ちます。それでは、そんな自尊感情を育てるにはどのようなことをすればよいのでしょうか。自尊感情を高めるためには、幼少期の育て方が重要であると言われています。自尊感情は成功体験を得ることや自分を肯定されることで育まれていくので、子供を縛りつけずに何事ものびのびとやらせることが大切です。たとえば子供が絵を描いたとしましょう。大人から見れば稚拙で「ここはこうした方がいい」と言いたくなる絵でも、「よく描けたね」と褒めることで自尊感情が育っていきます。時には叱ることも大切ですので、しつけとの兼ね合いを考えながら、褒めて伸ばしていく教育方針が良いとされているのです。大人になってから自尊感情を伸ばすには、人とのコミュニケーションが大切です。自分の得意分野に関する趣味などを見つけ、スクールやサークル活動、あるいはボランティアなどに参加することもいいでしょう。自分が得意とする場を見つけて人から必要とされる存在になれれば、自尊感情も育っていくはずです。
いかがでしたでしょうか。自尊感情は人間が生きていく上でとても大切な感情です。自分自身に尊厳を持ち、自分を好きになれれば、あらゆる場面で自信を持った行動が取れるようになるでしょう。仕事の面でも人との関わりの面でも、自尊感情は大切な役割を果たします。どんなときでも卑屈になったりせず、前を向いて生きていけるのは自尊感情が高い人です。人から認められ、自分自身を肯定できるようになれば自尊感情を高められます。あなたもぜひ、自尊感情を高めて人生を豊かにしてみてください。