近年、雑誌やネットを賑わせている「マインドフルネス」という言葉。あのスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、イチローやマイケル・ジョーダンといったトップアスリートたちも「マインドフルネス」を取り入れているのだとか。まさに浮世離れしたビジネスセンスや才能を持ち合わせた彼らが行なっている「マインドフルネス」とは、一体どのようなものなのでしょうか。
マインドフルネスは、一種の「瞑想」状態のことを言います。マインドフルネスを身につけると、人は周りで起こっていることに全神経を集中できるようになり、自分の感情をコントロールできるようになります。このマインドフルネス(瞑想)を何度も実践することで、心が鍛えられ、柔軟で強いメンタルを手に入れることができると言われています。一言でいうと「心の筋トレ」なのです。
瞑想というと、座禅のようなものをイメージする人もいるかもしれませんが、瞑想は修行ではありません。そしてなんとなく精神のリラクゼーション方法に似ているような気もしますが、身体や脳にもたらされるその素晴らしい効力は、リラクゼーションの枠にはもはや収めることはできないほど。昔なら「人間の神秘」として片付けられていたかもしれません。最近ではマインドフルネスによってもたらされる身体への効能は科学的に研究されており、実践段階に移っています。欧米では、さまざまな医療現場で取り入れられ、既に治療法のひとつとして威力を発揮しているのです。
マインドフルネスは、ビジネスシーンでどのように活用できるのでしょうか。
米グーグルやインテル、フェイスブック、ナイキなど、常に時代をリードする大企業は、こぞってマインドフルネスを企業研究に採用しています。グーグルは、2007年に「サーチ・インサイド・ユアセルフ」というマインドフルネスのプログラムを立ち上げました。これをきっかけに、グーグル社内でマインドフルネスが浸透し、今では5000人以上のグーグラーが実践しているのだとか。その結果は、高いビジネスパフォーマンスの促進に成功していると言われています。マインドフルネスを実践することで、仕事への集中力が高まり、ここぞというときの高いパフォーマンス、創造性豊かなアイデアを生むことが実証されたのです。
マインドフルネスの状態に入ると、結果よりも「今自分がやるべきこと」に集中できるようになります。一発勝負のプレゼン提案で、非常にレベルの高いパフォーマンスを発揮や、上司や同僚に一目置かれるようなアイデアを発案するといった素晴らしい能力を引き出します。さらに、思慮深い意思決定をし、部下の信頼を得るきっかけにもなったとの報告も。
また、マインドフルネスを行なうことによって、人間関係によるストレスや不安が軽減され、雑念をネガティブに捉えることが無くなります。自分の感情をコントロールし、ストレスや不安とうまく向き合うことで、解決に向けて行動できるようになります。
良好な人間関係は、おのずと仕事のアウトプットの質を向上させます。なぜなら、今までは排除していた他人の意見に耳を傾けたことによって、自分とは違う意見を積極的に取り入れ、さまざまな観点から考察したアウトプットを出せるからです。
マインドフルネスがもたらす、これらの効果が良い連鎖反応となって、仕事全体の生産性向上へと繋げます。
マインドフルネス(瞑想)を実践する法はたくさんありますが、仕事中でも簡単に取り入れられるのが「瞑想呼吸法」です。
瞑想といっても、あぐらをかいた「蓮の花のポーズ」で何時間も過ごす必要はありません。時間があるときに、1日5~10だけ「瞑想呼吸法」を行なうだけでも効果があるので、仕事の休憩時に習慣として取り入れてみてはいかがでしょうか。
大切なのはとにかく頭の中を空っぽにし、自分の呼吸に全意識を集中すること。
しだいに頭がクリアになり、研ぎすまされていくのを感じると思います。そして、集中力と創造性が湧き出てくるのを感じてください。
頭の上から一本の糸で吊るされているような感覚をキープします。
身体の中の空気を全部出すような気持ちで、お腹が凹むくらい息を吐き切りましょう。
次にお腹を膨らませながら息を吸います。これを何度か繰り返すと、深い自然呼吸ができるようになります。
呼吸に集中できなくてもあまり気にせず、とにかくリラックスし、毎日続けることが大切です。マインドフルネス(瞑想)は心の筋トレです。毎日繰り返すことで、少しずつ柔軟でしなやかな精神に鍛えられていくことを意識しながら続けましょう。
キューバの革命家チェ・ゲバラは「人は毎日髪を整えるが、どうして心は整えないのか」と言ったそうです。ビジネスシーンにおいても同じことが言えるのではないでしょうか。社内環境やインフラ、技術面などの「外見」だけを整えたところで、重要な部分の仕事をこなすのはやはり意思を持ち思考する「人間」なのです。環境改善だけでは生産性向上の限界があると気づいた先駆者たちは、人間に本来備わっている「内なる部分」のパワーに注目しました。
ビジネスは人の力で動いていくものなのです。現代のビジネスシーンにおいて、人間の潜在能力を引き出す「マインドフルネス」に大きな注目が集まったのは、必然だったのではないでしょうか。ジョブズやビル・ゲイツの類稀なるビジネスセンスは、マインドフルネスの未知なる能力を本能的に感じ取った結果なのかもしれません。あなたも本来持っている潜在能力を引き出し仕事の生産性をアップするために、マインドフルネスで「瞑想力」を高めてみませんか。