サラリーマン、特に営業職の場合は評価軸に「売り上げ」や「新規契約獲得数」などがあるでしょう。多くの会社でこの2点が大きな評価軸の対象となり、売り上げの高い営業マンは高く評価されてきました。しかし、高度成長期から成熟期に移行し、量よりも質が求められる現代の企業スタイルでは、この2点のみでの評価はされにくくなってきています。では、仕事において評価軸が高くなってきているのはどこなのでしょうか?そのキーワードとなるのが『貢献』なのです。
「限界利益」とは“売り上げ”から“変動費”を抜いたものを指します。まずはこの2人の例を見てください。
売り上げ1500万円
変動費800万円
限界利益700万円
売り上げ1200万円
変動費400万円
限界利益800万円
それぞれの売り上げから引かれている「変動費」とは、簡単に言うと経費を指し、材料や商品の仕入れや、さまざまな手数料も含まれています。「限界利益」は、売上高から変動費を引いたもの。いわゆる売上総利益(粗利)と呼ばれるものです。この限界利益が、会社が「儲かった額」ということになります。
では、改めて例に挙げた2人の営業マンの成績を比較してみましょう。
売り上げだけ見るとAさんの方が300万円ほど高い成績ですが、最終的な限界利益を見るとBさんの方が100万円ほど上です。売上高のような「量」ではなく、利益高という「質」が評価される会社では、最終的にどれくらい会社に利益をもたらしたかがポイントになるので、Bさんの方が会社へ貢献している、という評価になるのです。このように数字を見られる仕事においては、最終的に会社にお金が入るのか、「限界利益」を意識する必要があると言えます。
「管理可能費」とは業務上発生する経費のことで、先ほど述べた変動費に加え、固定費が含まれます。経費のなかには、自分である程度の調整が可能な「管理可能費」と、自分では調整が不可能な「管理不能費」があります。営業マンの管理可能費は、交通費や接待費用、携帯電話代などの通信費など、工場などの場合は製造原価、マーケティングや広報などの場合は広告費、宣伝費などのことを指します。この「管理可能費」を極力抑える、売り上げをあげるのも会社への貢献につながります。いくら売り上げや「限界利益」が多く出ていたとしても、交通費や接待費を大量に使っていては、当然利益額が減っていき、意味がなくなってしまいます。「限界利益」同様に、昔は表側の売り上げの金額の裏側で見逃されがちだったこの「管理可能費」も最近では重視されてきています。会社側も「管理可能費」も含めて、本当の意味での貢献利益を生み出しているかを正確に見るように変わってきています。働く側もそこまで考えて、利益を意識して仕事に取り組むことで初めて貢献しているとみなされるのです。
営業マンは多かれ少なかれ、新規契約の獲得に日夜奔走しているでしょう。しかし、契約をしてもらうための接待費、プレゼンや商談のための交通費、もっと言うとそのプレゼンに必要な資料作成の時間など、新規顧客を獲得するために膨大な時間と人件費をかけています。しかも、そこまで経費をかけてもすべての契約が取れるわけではありません。
対して、既存顧客の場合は継続してもらうためのプレゼン費用や接待費もかかりますが、新規獲得にくらべるとその回数や費用はだいぶ少なくなるはずです。また、何より契約後も既に自社商品を提供済なので、アフターフォローやサポートがメインとなり、時間的工数も新規にくらべると各段に削減できます。それでも膨大な工数とコストをかける新規顧客獲得数が大事だといえるでしょうか?
新規の顧客獲得数は確かに大事です。しかし、もっと大事なのは既存顧客の継続率を上げることです。既存顧客の購買率向上や、取引数増加を重視することが会社への「貢献」に繋がることも多々あるのです。さらに、既存顧客は大きな広報マンにもなり得るということ。実際にサービスや商品を使ってもらい、満足したら他の企業や経営者に紹介してくれることも多々あります。既存客からの紹介による新規顧客は、通常の新規開拓よりも格段に少ない費用・労力で獲得できます。顧客が顧客を呼ぶ、そんなプラスの連鎖を起こせるようになれば、もう無理して新規顧客獲得に奔走する必要もなくなるかもしれません。このように、手間暇かけた新規顧客獲得よりも、既存顧客の継続率が高い方が「効率的」と言えるケースも多いのです。
時代が変わり、企業側が社員の働きを判断する基準もどんどんシビアになってきています。ただ売り上げを上げるだけでなく、心から会社に「貢献」したいと考えて行動する人材が求められています。何をするにも常に頭の中で数字や工数を計算し、どう行動することが会社の利益になるか思考を重ねる。そうした会社への「貢献」積み重ねていくことが、最終的に自身の評価向上にも繋がります。